グループ法人税制とは 〜100%子会社との取引をコントロールし、戦略的な資産移転を実現する〜

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グループ法人税制

「グループ法人税制」とは、親会社と子会社の間に100%の資本関係(完全支配関係)があるグループ会社間での取引に適用される税務上のルールです。

この制度の最大の特徴は、グループ内の会社間で土地や建物などの固定資産を売買した際、そこで生じた「売却損」や「売却益」の計上が、税務上はグループ外へ資産が出るまで繰り延べられる(先送りにされる)という点にあります。

対象となるのは、帳簿価格が1,000万円以上の資産(土地、建物、有価証券など)です。

「完全支配関係」の判定と注意点

ここでいう100%の資本関係には、親会社が子会社の株式を100%持つ「親子関係」だけでなく、同じオーナー一族がA社とB社の株式をそれぞれ100%持っている「兄弟関係」も含まれます。

判定にあたって注意すべきは、自己株式(金庫株)や、持ち分が5%未満の従業員持株会は、その存在を「ないもの」として扱われる点です。

たとえば、持株会が4%の株式を持っていても、残りの96%を親会社が握っていれば、税務上は「100%支配」とみなされ、この税制が適用されてしまいます。

戦略的「損出し」を阻む壁と「5%ルール」

オーナー企業が含み損を抱えた土地などをグループ会社に売却して、売却損を計上することで法人税を抑えようとする(損出し)場合、この制度が大きな壁となります。

100%子会社に売却しても、税務上の損金には認められないからです。 この対策として活用されるのが、信頼できる役員や幹部社員などに5%程度の株式を持たせ、意図的に100%の支配関係を外す手法です。

これによりグループ法人税制の適用を免れ、売却損をその年度の損金として確定させることが可能になります。

メリットに変える「逆転の発想」

一方で、この制度は含み益がある資産を移動させる際には強力な味方となります。

通常、含み益のある土地を売却すれば多額の法人税がかかりますが、100%子会社へ売却すれば、売却益への課税も繰り延べられるため、無税で資産を移転させることが可能です。

これにより、グループ内での柔軟な資産再配置や、財務体質の改善を税負担なしで行えるようになります。

「行為計算否認」のリスクと理論武装

グループ法人税制を避けるために直前で株主構成を変えるような行為は、税務署から「不当に税金を減らす目的である」とみなされ、税務署長の判断で取引を否認できる「伝家の宝刀(行為計算否認)」を抜かれるリスクがあります。

これを防ぐためには、単なる節税目的ではなく、「ROA(総資産経常利益率)向上のための財務体質改善」や「幹部へのインセンティブ付与のための持株譲渡」といった、経営上の合理的なストーリーを文書(取締役会議事録など)として残しておくエビデンス作りが極めて重要です。

グループ法人税制は一見すると制約の多い制度ですが、その仕組みを正しく理解し、誰に、いつ、いくらで売るかを緻密に設計することで、オーナー企業のキャッシュ最大化に大きく寄与する武器となります。


この記事の引用元:『社長の賢い節税』(ビジテックキャピタル社長 福岡雄吉郎著)

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著者 福岡雄吉郎氏について:2005年名古屋大学卒業、その年に公認会計士試験に合格。大手監査法人を経て、29歳のとき、日本有数の経営コンサルタント井上和弘氏の著書『カネ回りのよい経営』(日本経営合理化協会刊)に衝撃を受け、井上氏が率いる株式会社 アイ・シー・オーコンサルティングの門をたたく。以降、井上氏のもとで、税務対策、資金繰り対策、高額退職金支給、株式承継にたずさわり、実践的な実務を徹底的に叩き込まれる。会計や税務の専門知識を活かしつつ、卓越した情報収集力・分析力・交渉力で、悩めるオーナー経営者の企業参謀として東奔西走の毎日を送っている。

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この記事を書いた人

日本経営合理化協会 出版局です。「ビジネスを成功に導く」をコンセプトに経営用語と、その活用法を解説します。

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