含み損とは 〜会社の「埋蔵金」に変える、賢い財務戦略の要〜

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「含み損」

「含み損」とは、資産の帳簿上の価格(簿価)が、現在の市場価格(時価)を下回っている状態の差額を指します。

例えば、バブル期に6億円で購入した土地が、現在の時価では2億円まで下落している場合、その差額である4億円が「含み損」となります。オーナー企業においては、長年保有している土地、建物、有価証券、あるいはゴルフ会員権などにこの含み損が潜んでいるケースが多々あります。

「見切り」から「損出し」へ

投資の世界には「見切り千両」という言葉がありますが、税務の世界では単に価値が下がったと見切る(評価損を認識する)だけでは不十分です。

評価損を計上しただけでは、原則として税務上の損金(経費)には認められないからです。 この含み損を、売却などのアクションによって「実現損」に変えることを、「損出し」と呼びます。

含み損を実現させる「3つのお金」

含み損を抱えた資産を、グループ会社や第三者に売却して損失を確定させると、会社には次の「3つのお金」が入ってきます。

① 却代金:資産を現金化することで、手元資金が増えます。

② 予定納税の還付:多額の売却損(特別損失)を出すことで、その期にすでに支払っていた予定納税が戻ってきます。

③ 法人税の免除(繰越欠損金):売却損によって大きな赤字(欠損金)が発生すると、翌年以降、その欠損金が解消されるまで(最大10年間)、将来の利益と相殺して法人税の支払いをゼロまたは大幅に減額できます。

財務体質の改善と株価対策

含み損のある資産を切り離す(オフバランス)ことは、単なる節税以上のメリットをもたらします。

第一に、ROA(総資産経常利益率)の向上です。稼がない「重たい資産」をバランスシートから消すことで、少ない資産で効率的に稼ぐ筋肉質な財務体質へと生まれ変わります。

第二に、事業承継における株価対策です。多額の売却損を計上して純資産を圧縮することで、自社株の評価額を劇的に下げることができ、後継者へのバトンタッチを有利に進めることが可能になります。

実行を阻む「心の壁」

これほどのメリットがありながら、多くの経営者が損出しを躊躇します。その理由は「赤字を出すと銀行の評価が下がる」「ミエやメンツが許さない」といった心理的要因です。

しかし、銀行が重視するのは本業の稼ぐ力である「営業利益」です。資産の整理による一時的な「特別損失」は、むしろ将来のキャッシュフローを改善する前向きな決断として、プロの銀行員や格付機関からはプラスに評価されることさえあります。

実務上の注意点:グループ法人税制

含み損を身内の会社へ売却する際には、「グループ法人税制」に注意が必要です。100%の資本関係がある会社間での取引では、税務上の損金計上が繰り延べられてしまい、即座の節税効果が得られません。

このため、意図的に5%程度の株式を信頼できる役員などに持たせ、完全支配関係を外すといった「賢い工夫」が求められます。

含み損は、放置すればただの「負の遺産」ですが、経営者の決断一つで、会社を強くするための「とっておきの埋蔵金」へと変えることができるのです。


この記事の引用元:『社長の賢い節税』(ビジテックキャピタル社長 福岡雄吉郎著)

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この記事を書いた人

日本経営合理化協会 出版局です。「ビジネスを成功に導く」をコンセプトに経営用語と、その活用法を解説します。

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