即時償却とは 経営者が知っておきたい定義と活用法

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即時償却

中小企業の経営者にとって、手元のキャッシュを最大化し、次の成長投資への原資を確保するための最強の税務戦略の一つが「即時償却(そくじしょうきゃく)」です。

これは、取得した設備などの資産価値を、使用を開始した年度に一括して全額経費(損金)として計上できる画期的な制度です。

通常、高額な資産は数年から数十年かけて減価償却していきますが、即時償却を活用することで、投資したその年の税負担を劇的に軽減することが可能になります。


即時償却の仕組みと対象企業

即時償却は、主に資本金1億円以下の中小企業を対象とした優遇税制です。政府の政策によって期間限定で実施されており、現在は「中小企業経営強化税制」として、2027年3月末までの取得分に適用されます。

この制度を利用することで、本来であれば耐用年数に応じて少しずつしか計上できない減価償却費を、初年度に100%計上できるようになります。例えば、9億円の対象設備を導入した場合、その9億円分がその期の利益から差し引かれるため、法人税率を約30%とすると、約3億円の法人税支払いを即座に回避できる計算になります。

活用すべき3つの類型(A型・B型・D型)

即時償却を適用するためには、事前の申請と認定が必要です。実務上は、以下の3つのパターンのいずれかで申請をおこないます。

A型(生産性向上設備): 旧モデルと比較して生産性が年平均1%以上向上する設備が対象です。メーカー等から「工業会の証明書」を入手することで申請が可能です。

B型(収益力強化設備): 投資利益率が年平均5%(または7%)以上となる投資計画を策定し、経済産業局の確認を受けるものです。証明書が入手できない特注設備などでも活用できます。

D型(経営資源集約化設備): 近年追加された類型で、M&Aをおこなった後に取得する設備に適用されます。買収した事業の修正ROA(総資産経常利益率)や有形固定資産回転率を向上させる投資が対象となります。

「即時償却」を最大化する実務的なコツ

即時償却をより効果的に活用するためには、資産の分類を工夫する「知恵」が求められます。

例えば、新工場や店舗を建設する場合、単に「建物」として一括で処理してしまうと、耐用年数が30年〜50年と非常に長くなり、即時償却も適用できません。

そこで、建設会社からの見積書を精査・工夫し、建物の本体(躯体)以外の部分を、耐用年数の短い「建物附属設備」や「機械装置」として切り分けることが重要です。

具体的には、電気設備、空調、給排水工事などを「建物附属設備」として独立させることで、その部分について即時償却を適用できるようになります。このような小さな工夫を積み重ねることで、投資したお金の回収スピードを劇的に早めることが可能になります。

経営戦略としての即時償却

即時償却は単なる節税策ではなく、企業の生存率を高めるための「キャッシュ・ファースト」な経営戦略です。

多くの経営者は「利益」を出すことに執着しがちですが、中小企業において最も大切なのは「キャッシュ」です。即時償却によって納税を先送りし、手元に残った現金をさらに次の設備投資や人材採用に投じることで、他社に先んじた成長が可能になります。

また、経営には必ず「マサカの坂(想定外の危機)」が訪れます。業績が良い時に即時償却を積極的に使い、利益を抑えてキャッシュを蓄えておくことは、将来の不況期に「無駄な税金を払わない」ための高度な防御策にもなります。

注意点と税理士との向き合い方

即時償却を利用する上で、絶対に忘れてはならないのが「事前の認定」です。原則として、設備を取得して使い始める前に「経営力向上計画」などの申請を終えておく必要があります。

後から申請しても認められないため、投資の意思決定段階で専門家と相談することが不可欠です。

なお、一部の税理士は「長期的には納税額は変わらない(単なる課税の繰延べである)」として即時償却に否定的な意見を持つことがあります。

しかし、将来の利益が保証されていない経営の現場において、「今ある1億円の納税を回避し、手元にキャッシュを残すこと」には計り知れない価値があります。

この記事の引用元:『社長の賢い節税』(ビジテックキャピタル社長 福岡雄吉郎著)

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この記事を書いた人

日本経営合理化協会 出版局です。「ビジネスを成功に導く」をコンセプトに経営用語と、その活用法を解説します。

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