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値決めとは

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値決めとは

値決めとは、企業が提供する商品やサービスの価値を金額に換算する行為であり、「必要粗利益」を確保して企業を存続・発展させるための戦略的決断を指します。

多くの社長は「売上を上げれば利益はついてくる」と考えがちですが、実際には粗利益が伴わない売上の増大は、運転資金の逼迫や倒産リスクを高める結果を招きます。

粗利益(売上総利益)へのフォーカス

値決めの真の目的は、売上高ではなく粗利益の最大化にあります。粗利益は売上から変動費(原材料費や仕入費用など)を引いたものであり、ここから人件費や家賃といった固定費を賄い、最終的な利益を捻出します。値決めによって単価を一円上げれば、その一円はそのまま利益に直結するため、そのインパクトは絶大です。

社長の専決事項としての値決め

戦略の決定は社長にしかできない仕事であり、値決めもその例外ではありません。開発担当者や営業現場に任せきりにすると、原価の積み上げや競合への対抗といった近視眼的な判断に陥り、高収益構造への変革という本来の目的を見失うことになります。


値決めの進め方

正しい値決めは、場当たり的な設定ではなく、損益計算書(P/L)を「下から上へ」逆算するプロセスを通じて行われます。

プロセス① 最終的に残したい利益(内部留保)の決定

まず「売上をいくらにするか」ではなく、「最終的にいくらのおカネを会社に残したいか」から考えます。借入金の元本返済は内部留保から支払われるため、返済計画や将来の投資計画を考慮して、当期純利益の目標を設定します。

プロセス② 必要営業利益・必要経常利益の算出

目標純利益から税金を逆算し、さらに借入利息などの営業外費用を足して、稼がねばならない「営業利益」を算出します。

プロセス④ 「必要粗利益」の確定

算出した目標営業利益に、確定している「固定費(人件費、家賃、減価償却費など)」を足し合わせます。これが、今期に会社全体で稼ぎ出さねばならない「必要粗利益」です。この数字を知らずに経営を行うことは、航海図なしで海に出るのと同じくらい危険です。

プロセス⑤ 売上目標と単価・数量の設計

必要粗利益を達成するために、想定される粗利益率から「最低限必要な売上高」を算出します。その売上高を実現するために、次に述べる「六つの価格戦略」の中から自社の体質(受注・見込み)や商品寿命(導入・成長・成熟期)に最適な手法を選択し、具体的な単価と販売数量の組み合わせを設計します。


値決め実行にあたってのポイント

値決めを成功させ、安定的な高収益を実現するための戦略的着眼点は以下の通りです。

ポイント① 「原価積み上げ方式」からの脱却

多くの企業が「原価+利益」で価格を決めますが、これは儲からない体質を作る典型です。値決めは「顧客が認める価値」に基づいて行うべきです。お客様は原価に対しておカネを払うのではなく、その商品を使って得られる利便性や喜び(価値)が売価を上回っていると感じた時に購入を決断します。

ポイント② 自社の「体質」に合わせた戦略展開

見込み体質(BtoC等)の場合:自ら価格決定権を持つため、高粗利を狙う「高価格戦略」や、リスクを抑える「定額制(サブスクリプション)」などが有効です。

受注体質(下請け・BtoB等)の場合:価格決定権を顧客に握られやすいため、独自の固有技術を開発して「見積もり価格戦略」で優位に立つか、得意先を増やして依存度を下げることが必須です。

ポイント③ 六つの代表的な価格戦略の活用

低価格戦略:圧倒的な数量を売ることを前提に、固定費を薄く広く回収する。

高価格戦略:独自性や希少価値を武器に、ステイタスを重視する特定の顧客層へ高く売る。

競争価格戦略:圧倒的なシェアを持つリーダー企業が、余剰利益を使ってライバルを淘汰する際に用いる。

普及価格戦略:導入期に期間・数量を限定して安く提供し、一気に知名度を上げる「囮」の戦略。

定額制価格戦略:サブスクリプションにより顧客を固定化し、見込み事業のリスク(売れ残り)を排除する。

見積もり価格戦略:受注事業において、他社を圧倒する付加価値や提案力で指名受注を勝ち取る。

市場実験(テスト)の実施

理論だけで決めず、実際に価格を変えて市場の反応を見る「市場実験」は極めて有効です。例えば、ダイレクトメール等で価格設定を変えた数パターンの案内を送り、レスポンス率(反応率)を測定することで、売価と数量の積が最大になる「最適価格」を科学的に導き出すことができます。


値決めの留意点

値決めを行う際に陥りやすい罠や、避けるべきリスクについては以下の点に注意が必要です。

売上至上主義の罠

売上を増やすために安易な値引きを行えば、粗利益が激減し、それを補うためにさらに多くの活動量(数量)が必要になります。その結果、現場は疲弊し、資金繰りも悪化して、最終的には「売上は増えたがカネがない」という倒産予備軍の状態に陥ります。

「デフレ根性」の払拭

長年の不況下で染み付いた「安くなければ売れない」という固定観念(デフレ根性)を捨てなければなりません。社長は自らマーケットに出て顧客の本音を吸い上げる「マーケッター」となり、他社がマネできない「異(独自性)」を創り出し、強気の値決めができる体勢を築く執念を持つべきです。

現場への丸投げの禁止

特に「競争価格」や「大幅な値引き」が必要な場面では、営業マン個人の判断に任せてはいけません。彼らは自分のノルマ達成を優先しがちであり、会社全体の損益分岐点を把握していないからです。価格のガイドラインは必ず社長が決定し、指示しなければなりません。

供給制限による価値維持

高価格戦略を採る場合、売れるからといって市場に大量放出すれば、希少価値が失われブランドが崩壊します。意図的に「買いたくても買えない状態」を作る「供給制限の戦略」など、数量をコントロールする冷徹な視点も必要です。

社会的正義の遵守

コメやトイレットペーパーといった日常の必需品において、供給を制限して価格を吊り上げるような行為は社会から指弾され、信用の失墜を招きます。供給制限はあくまで嗜好品や特殊なサービスに限定すべき手法です。


中小企業の値決め戦略:まとめ

値決めとは、社長のロマンやビジョンを現実の数字へと橋渡しする聖なる経営行為です。原価や競合に引きずられる「受動的な値決め」から、必要粗利益を逆算し、独自の価値を問う「能動的な価格戦略」へと転換すること。これこそが、企業を必然的な繁栄へと導く唯一の道となります。


この記事の引用元:『儲かる方向性の決め方』(日本経営合理化協会 理事長 牟田太陽著)

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この記事を書いた人

日本経営合理化協会 出版局です。「ビジネスを成功に導く」をコンセプトに経営用語と、その活用法を解説します。

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